anezakimanのアブダビ日記

アラブ首長国連邦アブダビ首長国に駐在になりました。そこで出会ったことを綴ります。

読書:SHOE DOG 靴にすべてを。

くたびれ果てて待望の週末。この度はここ何週間か出掛けたりしていてお疲れモードでもあったため、2日とも家で下記本の読書三昧となった。

SHOE DOG(シュードッグ)

SHOE DOG(シュードッグ)

 

日本で買ってきた今話題の本。ナイキ創業者による、創業した1962年から株式上場した1980年までの回顧録だが、ビジネス書というよりはハラハラドキドキの冒険活劇書物といった方が良いかもしれない。

「人生は成長だ。成長がなければ死ぬしかない。」、「シュードッグとは靴の製造、販売、購入、デザインなどすべてに身を捧げる人間のことだ。」というモーレツ企業ストーリーなのだが、かといってスーパーマン揃いというとそうでもなく、「私たちは世間に対し、田舎者でないことを何としてでも示したかった。それでいて、ほぼ全員が哀れなほど自己嫌悪の塊で、このため自己主張を抑えている。自分を賢いと思う馬鹿者は1人もいない。」といった劣等感集団という。

そうした苦闘する人間ストーリーもとても刺激的なのだが、俺にとって興味深かったのは日本企業の存在である。そもそもフィル・ナイト氏がこの業界に入ったのは、神戸のオニツカ(現アシックス)製の品質の良いシューズに感動して、これを米国に輸入したいと思ったことであった。このオニツカの人々とのやりとりがとても面白い。日本人とは思えないヒールもいれば、日本人らしい人間も出てくる。

そして日商岩井。「アジアのことを考えると、真っ先に浮かぶのが日商岩井だ。日商という存在がなかったら私たちはどうなっていただろうか。」。出てくる日商岩井マンたちの格好良いこと。日商岩井でアイスマンとフィル氏に言われていた沈着冷静なイトー氏が、ナイキが苦境に陥っていた際に銀行に対して全額借金を返済すると宣言した際には「私はこれが日本人だと言ってやりたかった。言葉を詰まらせながらでも。」。

そういえば俺も同社との付き合いはあった。面倒見の良い個性的な人間集団であったことを思い出す。今は同社はない。別の総合商社と一緒になり、俺の業界でもメジャーシェアの別の会社の社風が幅を利かす。それは管理面が前面に出た会社ではある。時代といえば時代であるね。

そして現在、講演会等で若者からの今後の悲観的な見通しについて質問されると、「その時に私が話すのは、1962年に見た荒廃した日本だ、がれきや荒廃からハヤミ氏(日商岩井の社長を勤めた後、日銀総裁にもなった速水優氏)やイトー、スメラギら賢い人間が生まれたのだ。自然にも人間にも、まだ思いのままにできる未開の資源があり、多くの危機を解決する方法や手段がたくさんある。私たちがやるべきことは、できる限り勉学と仕事に励むことだけだと伝えた。別の言い方をすれば、誰もが混沌としたジャングルから学び取らなければならないのだ。」。

読了した後、フィル氏の毎日6マイル(約10km)のランニングにも刺激され身体を動かしたい気持ちになり、土曜の午後、33℃の中で歩き出した。シューズは当然ナイキ(前から買ってあったものだけどね)。海沿いの道を片道7km歩き、通常は帰りはタクシーで帰ってくるのだが、帰りも歩いて汗だくになりながら結局14kmのウォーキングとなった。Just do it!