anezakimanのアブダビ日記

アラブ首長国連邦アブダビ首長国に駐在になりました。そこで出会ったことを綴ります。

大企業でイノベーションを起こす

日経ビジネスで連載されている経営教室「反骨のリーダー」。3-4週ごとに違う経営者が出てくるが、12月に登場したセイコーエプソンの碓井稔社長の「大企業でイノベーションを起こす」は、俺の琴線に触れる興味深い内容だった。

モノづくりの会社は、品質や納期を絶対に妥協できません。それには組織的に規律を持って対処する仕組みを作らなければいけません。それに加えて、ベンチャーのように、一人ひとりのユニークなアイデアを躍動させて、活躍してもらう。この両輪が必要です。

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大企業としての「規律」と、個々のユニークな発想である「躍動」、この2つの連動、両立がキーワードだと。これは納得にいく話だと思った。そして具体的な方法論として

挑戦するときは既存の事業部から別組織にして、自由にやらせます。そしてある程度形になったら既存の組織に戻す。開発段階は別組織で自由に活動させて、軌道に乗ってきたら既存の組織の中に戻すという循環をうまく継続できれば、大企業とベンチャーの良さを両立できると考えています。

イノベーションを生み出すためには、関係者が近くにいることも大切だという。

ソフトウェアのようなものは離れた場所でも開発できますが、モノづくりは違います。いいアイデアがあっても、実際にモノを作れないと話にならない。みんなで顔を合わせていろんなことを議論して、その中から新しい価値を作り出していくことが必要です。顔と顔を合わせて議論し、人と人のアナログ的な融合の中から企業の競争力は生まれています。そういう環境を作っていける組織にしておかなければ、なかなかイノベーションは起こせないでしょう。

俺は今まで営業中心だったので、本社が長くて製造現場から遠かった。今は工場に頻繁に行けて、技術屋とも直接いろいろな会話をして、確かにいろいろな刺激を受けている。

そしてイノベーションとはどういう視点で起こすのか。

大企業になればなるほどライバルが増えます。そのライバルに勝つことが企業の目的になってしまいがちですよね。「新しい社会をつくる」という志ではなく、「業界で一番になる」ことを目指してしまう。それで世の中が良くなるならいいけど、高度成長期でもない限り、そうはならない。業界1番という志は決してイノベーションを起こす志じゃないと思います。

そして、今成功している会社がイノベーションを起こすのは、何もしがらみがないところから起こすよりも大変です。そのため、「大企業ではイノベーションは 起こせない」と考えてしまうのも分かります。

それでも、大企業にしか起こせないイノベーションはあると思います。エプソンにとって、大容量タンクのインクジェットの複写機、ペーパーラボはその一例です。これらは「印刷を気軽にする」という課題解決の視点から生まれました。

環境やコストの課題について、明快な解決策を見いだせていないから「ペーパーレスになる」と言われているだけ。紙はやはり便利ですよね。だからこそ、妥協しないで「紙を使わない方がいい」と思わせている課題を自分たちの技術で解決し、新たな価値を提案することこそがイノベーションでしょう。

 そして大企業だからこそ持つ蓄積を生かすべきと。

大企業は、自分たちが蓄積してきた資産を、社会の役に立つ新しい価値へ転換していくことが、今後さらに求められると思います。デジタル化で今まで蓄積してきた資産が「負の遺産」となり、全てが無駄になるなんて考えてはいけません。自分たちの強みを生かし、勝っていく未来は必ずあります。 

そのためには自分たちの会社を強みをしっかり理解しないといけないですよね。もちろん、社会の課題の本質、本当に何が課題かも見極める

そして経営者の役割として、

大企業のイノベーションは、時に既存事業を否定することもあり得ます。経営者が、世の中の人たちが圧倒的に賛同できる、喜べる世界を実現するんだ、という目標を設定しないといけないでしょう。

 うーん、目線が相当上だね。予算だの競合だのを超えた世界観、視点が、イノベーションには必要なのである。腹落ちする話だが、足元の俺にはなかなか持ちえないねえ。頑張ろうっと。