anezakimanのアブダビ日記

アラブ首長国連邦アブダビ首長国に駐在になりました。そこで出会ったことを綴ります。

スリランカ民主社会主義共和国旅行記

北海道の8割ほどの面積の島に2,100万人が暮らす熱帯の国、スリランカ。紀元前3世紀頃からシンハラ人の仏教王国が勃興して栄えてきた。近代に入ってポルトガル、オランダ、イギリスの植民地支配を受け、1948年にイギリス連邦セイロン自治領として独立。独立後はシンハラ人と南インドからの移民のタミル人の国内紛争が続き、ようやく2009年に内戦が終結した。

長い歴史と豊かな文化・自然を背景に、8つの世界遺産を持つ観光資源の豊かな国であるが、内戦中は危険で旅行者は行きづらかった。現在は北部以外は危険地域外となり、落ち着いてきて人気上昇中である。

イギリス植民地時代に大規模な紅茶のプランテーションが始まり、セイロンティーとして世界的な紅茶の産地となった。今でも中央高原地帯には広大な茶畑が広がり、紅茶の生産量世界2位、輸出量世界1位を誇る。お茶の集積地とコロンボを結ぶ鉄道や道路網が整備され、交通インフラは比較的しっかりしている。

そんな奥深い歴史文化、緑あふれる高原、その高原を走る鉄道網というアブダビに無いものを求めて、5泊6日でスリランカを旅してきた。旅程は下記である。

1日目。シャルジャからエア・アラビアでコロンボ入り。

2日目。コロンボからシンハラ王朝最後の地、キャンディという内陸の仏教都市へ鉄道で移動(2.5時間)。

3日目。キャンディから南部のお茶の生産地、集積地で栄えたヌワラ・エリアへ鉄道で移動(4時間)。

4日目。ヌワラ・エリアから東の田舎町、エッラにバスで移動(2.5時間)。

5日目。エッラからコロンボに鉄道で戻る(10時間)。

6日目。早朝3時台発のエア・アラビアでシャルジャに帰還。

まるで学生のバックパッカーのような旅ではあったが、上述3つのテーマを満喫するとともに、久しぶりにアジア的な雑然さ、活気、多様なヒトやモノとの出会いがあって、ぐったりしつつも充実感溢れた旅となった。

1日目。コロンボの晩飯はローカルな人が集う駅近辺の地元食堂でさっそくカレー。これで約170円。

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ペターと呼ばれる活気あふれる庶民の街。この晩はこの近くの安宿に泊まる。
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2日目。コロンボ・フォート駅から出発。シンハラ文字が可愛らしい。
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キャンディまで乗ったインターシティ(主要都市間の直通電車)。ファーストクラスで800円ほど。
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朝のコロンボ・フォート駅に入る通勤電車の混雑ぶり。アジアだなぁ。
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キャンディ観光の目玉は、世界遺産となっているブッダの歯がある仏歯寺。
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ウダワッタキャレー自然保護区という高台の巨大公園を散歩。高原の爽やかな風と緑の木々に癒される。
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この地の伝統芸能、キャンディアンダンスのショーを見学。

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晩飯はパブで。地元のライオンビールで喉を潤す。
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3日目。キャンディからヌワラ・エリアまで乗った列車の車窓から。限りなく茶畑が広がる風景は、アジア一美しい車窓とも言われる。

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旅行者に人気のルートであり、電車の中は欧米系中心とした若者でいっぱい。ギターを奏でる陽気なスペイン人。

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ヌワラ・エリアはお茶の生産・集積で有名。ティーファクトリーに見学に行く。ここの会社はキリンの「午後の紅茶」の茶葉を提供しているとのこと。
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茶摘みの風景。
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4日目。朝5時30分に車をチャーターして1時間30分ほど南方に走る。世界自然遺産のホートン・プレインズ国立公園、そしてその中にあるワールズ・エンドがお目当て。

入り口付近ではこの地の鹿がお出迎え。
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帰りはお猿さんがお見送りしてくれる。

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熱帯だが標高1,000メートル、早朝ということもあり、着いた時は気温7-8度という震える寒さ。

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公園の中には一周9キロ、約3時間の周遊コースがあり、だんだんと気温が上がる中での自然豊かな大平原の散策はひたすら気持ち良い。
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南の端にはワールズ・エンドと呼ばれる地。ちょっとわかりずらいけど、簡単な鉄条網の先には1,000メートル直下降の断崖絶壁。これは本当に足がすくむ。
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雨季の季節での豊かな水の恵もあり、公園内にはこんな滝や小川も走っている。

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午前中この豊かな自然を満喫し、ヌワラ・エリアに戻って今度はバスで移動。2時間半ほど走ってエッラという田舎町にたどり着く。
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ここも茶畑だらけ。その日の宿泊は茶畑の上に立つ高台のロッジ風の宿。
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森のテラスで鳥のさえずりを聴き、美味しい紅茶を飲みながら優雅な朝食。

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エッラの観光名所は、イギリス植民地時代に作られたナイン・アーチ・ブリッジと呼ばれる石造りの陸橋。19世紀後半に造られてから一度も補修なしで現在も現役。観光客はレールの上を歩きながらここにやってくる。


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晩飯は偶然紹介してもらったAK Ristoroというレストラン。日本人女性がスリランカ人男性と結婚して一緒にやっているインターナショナル系レストランで、ご本人とも歓談させていただく。日本食もあって、思わずふだん食べれないカツ丼を注文、これがなかなかいけました。
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5日目。朝の散歩がてら、リトル・アダムス・ピークと呼ばれる小山に登る。本日も快晴、快適なり。

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さすが敬虔な仏教国。こんなところにもお釈迦様が鎮座されている。
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エッラから帰途につく。エッラ駅は旅行者で大混雑。
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この列車で延々10時間乗ってコロンボに戻る。ちなみにエッラ・コロンボ間の距離は約270キロ。平均時速27キロの計算だ。

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山間の列車ということもあろうが、鉄道システム全体が老朽化していることもありそうだ。コロンボ駅近くでの揺れはひどく、読書もままならなかった。

コロンボではいったんビジネスホテルにチェックイン。夕食、シャワー、仮眠を取って1時に宿を出発、3時40分コロンボ発、7時シャルジャ着で無事帰還した。いやー、やれやれ、楽しかった。気分転換ができて、少し元気がもらえましたね。

以下、道中の雑感、余談、気づきなど。

  • 物価が安い。ホテル代除く交通費、食費などで使ったのは合計3万円ちょっと。まあ俺のバックパッカー的能力が上がったこともあるけどね。
  • 今回日程の関係で中央高原地域しか行けなかったが、他にもシギリア・ロックなど見どころ満載。観光立国として有望と実感。ただし駅員の対応が傲慢だったり、街がゴミだらけですえた臭いがしたり、あるいは帰りの電車の切符が取れずに宿にお願いしてなんとか2等指定を取ってもらったが、正規料金の倍近く要求されたりと、いろいろと改善の余地大。内戦から10年でまだまだ発展途上だからね。
  • イギリス人はお茶の為に当時としては立派な鉄道網をスリランカに構築した。よく言われることだが、砂漠の地であったUAEはイギリス保護領だったけれど病院一つも作らなかった。まあそれが帝国主義の植民地経営ということだろうけど。
  • どこの観光名所に行っても中国人わんさか。世界の人口比で考えると当然だろうし、昨今のスリランカにおける中国マネーの膨張もあるか。
  • 内戦は終わったが、タミル系のタクシー運ちゃん曰く、シンハラ人とタミル人は仲はよくない、また今の大統領は最悪と。スリランカは仏教系のシンハラ人7割、あとはヒンドゥー教タミル人とイスラーム、クリスチャンが混在。多民族国家のメジャーとマイナーの共存共栄の難しいことよ。
  • そのタクシー運ちゃんによると、ヌワラ・エリア地区の女性は複数の男性と同時に付き合うことが普通であり、男性もそれを是認していると。検証しようがないけど(笑)、熱帯高原地帯のおおらかさ、早くからのイギリス統治の影響で西洋文化の香り漂う街の雰囲気からは、それもありかなと。
  • 列車の旅の楽しさ。3回乗った電車のうち、2回女性と隣り合わせ。カナダの女性とウクライナの女性。おしゃべりを楽しんだり、一緒にお茶やお菓子を食べたり、つかの間の交流。
  • カリーはほぼ毎日食べていて、俺にはほどよい辛さで美味しかった。お腹も特に問題なかったけど危機が一回。ホートン・プレインズ国立公園の散歩中、急に激しい便意が。公園入り口のトイレに戻るまでは間に合わないこと必至、だだっ広い平原なので隠れてする場所も見当たらず、いわんや世界自然遺産の中である。ようやく森に入って青空トイレやむなしと思ったら、なんとそこに公園内唯一のトイレがあった。あーブッダ様のご加護か(笑)。