anezakimanのアブダビ日記

アラブ首長国連邦アブダビ首長国に駐在になりました。そこで出会ったことを綴ります。

サウジアラビア王国•リヤド旅行記

アラブ首長国連邦のお隣の大国、サウジアラビア王国。これまで仕事でしか関心を持たなかったし、現実的に仕事以外で入国する手段はなかった。同国のムハンマド・ビン・サルマン皇太子が主導している Vision2030 における脱石油・経済多角化改革の一環で、昨年9月に日本を含む49か国に対して観光ビザが解禁された。

そうなると好奇心が湧いてきて一度行ってみるかと思い立った。ネット経由でeVISAを申請してみたところ、1年間有効のマルチビザが第4労働日目にサクッと取れた。そこで首都のリヤドに行くことにし(初めての訪問、ダンマンには仕事で数回訪問)、金曜日朝アブダビ発、土曜日夕方リヤド発のフライトとリヤド1泊のホテルを押さえ、この週末にサウジアラビア観光旅行を敢行した。

前夜市内で飲み会があり、控えたつもりだったが翌朝5時起きはやや辛かった。いつもの軽装とバックパックで家を出て、朝食をいつもの空港ラウンジで野菜中心に取って元気回復。
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2時間弱のフライトでリヤドのキング・ハリッド国際空港に到着。空港ビルに入った途端に空港係員に中国人かと聞かれる。パスポートコントロールの全身黒づくめの女性にも同様に聞かれ、さらに中国渡航歴まで問われ、思わず Never と答えてしまう(苦笑、昔何度もあります)。日本人であると分かると、最後はニッコリと(ちゃんと見えないけど多分) Welcome to Saudi Arabia と言ってくれて、ちょっと嬉しくなる。

さて、サウジの地球の歩き方はまだ当然なく、ネットで事前にいくつか調べる。リヤド市内および周辺には世界遺産含む歴史的遺跡が2つあるようで、それを初日に回って、2日目は博物館に行くことにする。

空港を出てタクシーを拾って、空港から西へ30分ほどのところにある世界遺産ディライーヤという地区に向かう。ここは18世紀にサウード家が勃興した際の拠点となったところで、王宮や街並みなどの都市遺跡が復元されているという。

ところが乗ったタクシーの運転手、これがアブダビでは考えられないがどう見てもサウジ人なのだが、英語がまったくダメで、ディライーヤ地区に着いてもどこで降りるかお互いチンプンカンプン。途中で警官や警備員に聞いて、ようやくビシターセンターらしきところで下車できたのは良かったが、この日は金曜日のイスラーム休養日。人もまばらで観光名所らしきところは許可証がないと入れないという。

まあ嘆いても仕方ない、この広大な土壁の遺跡群の周りは公園になっており、そこかしこを散策しながら見れる範囲で見て回る。

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2時間ほど雄大な遺跡を散策後、リヤド市内に向かおうと思うが、タクシーがまったく見当たらない。仕方なくこの地区の市街地に向かってとぼとぼ歩き始めると、10分もしないうちにタクシーが来たので掴まえて市内に向かう。やれやれ。

旧市街地にあるホテルに無事チェックイン。ホテルから徒歩圏内に次の目的地、マスマク・フォートレスがあり、少し休憩してから出かける。ラシード家にリヤドを追われたサウード家が、1902年にこの砦を襲ってリヤド奪回の発端としたところで、その主人公は襲撃当時22歳だったアブドゥルアズィーズ・イブン・サウード(サウジアラビア王国の初代国王)であり、この国にとって歴史的に極めて意義深いところだ。
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この方がその主人公。身長2メートルの偉丈夫で迫力満点。

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砦の中は博物館になっており、この襲撃含む前後の状況やリヤドの歴史をわかりやすく展示してあり、なかなか見応えあった。

さて、そのあとの夕食である。サウジは酒が飲めない。せめて美味しい日本食でもないかとネットを漁ると、リヤドで唯一日本人コックのいる店があるという。それが YOKARIという名前のリヤドでもっとも高級なモールの中にある高級和食レストランである。さっそくそこに行ってみる。
まずは蟹のミンチボールの入ったスープ。薄いみそ味で美味。
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続いて看板のお寿司。マグロ、ハマチ、シャケの握り。ネタが新鮮で美味しいけど、小さくてまるでアペタイザー。
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そこでメインに頼んだのがこれ。味噌汁ではなく
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キノコのリゾット。もちもちのしたご飯にショウガが利いて、おこげもあっていける。
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裕福なサウジ人を対象にしていて、いわゆるフュージョンに近いが、ぎりぎりのところで美味しい和食もキープしているといった感じ。日本人シェフには会えなかったが、満足であった。お代は上記3品で日本円で1万円ほどであった。やっぱり高いね。。

お腹が膨れたので、散歩がてら有名なキングダム・タワーまで30分ほど夜の散歩。高さ302メートル、リヤドで一番高いビルとか。
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一番上にあるところがスカイブリッジと呼ばれる展望台。2,000円ほどかかったが昇ってみる。

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なかなか豪華な光景。
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こうして初日が終わった。2日目はホテルから20分ほど歩いたところにあるリヤド国立博物館に朝から直行。

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2階建ての広大な敷地に、人類とユニバースから始まって、アラビア文明、イスラーム以前、預言者のミッション、イスラーム化とアラビア半島、サウジ王国勃興と統合など、時代順、テーマ別に分かりやすくて興味深い展示が続く。

イスラーム以前の時代に岩に描かれた壁画。イスラーム以前にも豊かな文化があったと。
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イスラーム化初期のウマイヤ朝時代の最大版図。

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イスラームのドアや絨毯の凝った模様が美しい。
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そして最後を飾るのがこの国の発展を決定付けた石油開発。
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特別展示でなんと日本の東北地方の手作り民芸品のコーナーが。アラーのお導きか(笑)。
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たっぷりと3時間、アラビア半島、イスラーム、サウジの歴史文化に浸った。この分野への関心著しい俺は、最近いろいろな博物館を訪れているが(カイロ、ナポリ、イスタンブール)、ここはその中でも秀逸であった。

最後に博物館に隣接する公園で、すがすがしい気候(気温26度、湿度30%)の中で気分良く散策しながら、リヤドの旅を終えるのであった。
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わずか2日間のサウジ旅行であったが、興味深かった。以下雑感。

  • 3,300万人の人口、サウジ人比率7割、日本居住者1,000人弱と、UAEとは人口動態が大きく異なり、さらに社会経済改革を進めていると言えどもいまだ禁酒、現地女性は顔を出せない、公開処刑など、隣の同じアラブの国なのだが、やはりアブダビとは雰囲気は大いに異なり、重苦しい感じはあり。
  • 厳格なイスラームであるワッハーブ派と組んで、100以上の部族が乱立する戦国時代を勝ち抜いたサウード家の強固な意志が、この国のコアなことを感じる。これはUAEでも似たようなものだが、建国の英雄にして屈指のリーダー、アブドゥルアズィーズ・イブン・サウードの子供世代がずっと国王を継承してきて、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子を筆頭に孫世代がいよいよ出てきた。苦労知らずのお気楽お坊ちゃんか、天才的なリーダーか、世界が固唾をのんで見守っている。f:id:anezakimanAD:20200210032732j:image
  • 観光客はすこしずつ増えているようだが(タクシー運ちゃんいわく)、英語が通じづらく(首都リヤドですらアラビア語だけの表示が目立つ)、交通公共機関の問題(タクシーしかない、リヤドでは地下鉄建設中もだいぶ遅れているらしい)など、まだまだこれから。ただし容易なビザ取得プロセスなどの努力も感じる。
  • お酒が飲めないのは辛いと思ったけど、そもそも無いと思えばそうでもなかった。サウジで暮らせるか(1日だけでしょ、無理無理)。