火星、コロナ、ワクチン
本日夜、日本の種子島から昨年7月に飛び立ったUAEの火星探査機、HOPE(希望、アラビア語でアマル)が7か月の宇宙飛行の末、火星の軌道突入に成功した。これまで火星の軌道以内に入った国は米国、中国、インド、ロシアといった大国だけ。他の国も含めて幾度も挑戦してきたが、成功率は半分以下だという。この偉業を、直近一年はコロナ禍であったにも係わらず、火星ミッション計画発足からわずか6年でこの小さな国が成し遂げた。
Mission accomplished ということで、この国の指導者をはじめ、UAE国民、そして我々のようにこの国にお世話になっているエクスパッツにとっても、おめでたいことである。
やると決めたら科学的・合理的・効率的に方法論を探求して、時間軸を設定してやってしまうところが、このアラブ首長国連邦の凄いところだと改めて感じる。
新型コロナパンデミック対策については、この国も足元は苦戦気味だ。下記はUAE政府の昨日の公表数字である(括弧内は日本の本日公表の数字)。
- 感染者総数 332,603人(日本 408,272人)
- 至近1日の新規患者 3,310人(日本 1,569人)
- 死者 947人 (日本 6,605人)
UAEの人口は日本の8%くらいなので、人口比ではUAEの数は圧倒的に多く、特に連日大量のPCRもしくはDPI検査を継続していることもあり(ここ数日の検査数は16万件)、1日当たりの新規患者が3千人台の高原状態が続いている。
何度か書いてきたように、この国は海外労働者が人口の8割を占め、その労働者のかなりが建設工事従事者などの3密生活者であり、この層を中心として徹底した検査、隔離、監視を行ってきた。加えて厳しい規制と罰金、さらに海外からの帰国者を監視するためのリストバンド装着義務などの強権的施策を実施してきた結果、一時期落ち着いていた。
しかし海外からのヒトやカネに頼るドバイがいち早く旅行者に国を開放し、海外から人が大勢おしかけたようだ。噂だとドバイの患者数が急増、さらにアブダビもドバイからの入国に厳しい規制をかけているにも係わらず、漸増しているようだ。結果として国全体として上記の新規患者高原状態が続いている。
このため、各種施設への入場人数制限強化や営業閉鎖を最近復活させた。
この辺りは状況を見ながら果断に迅速に判断、徹底するスタンスは相変わらずだ。
そしてコロナワクチン接種。いち早く中国シノファーム製不活化ワクチンを対象に、大規模治験フェーズ3を実施し、昨年9月に医療従事者等の最前線ワーカーを対象に緊急認可し、国全体での集団免疫を目指していろいろなインセンティブを付けながら(例えばワクチン接種して一定の条件を満たせば自主隔離を免除等)ワクチン接種を加速してきた。ワクチンの種類はシノファーム以外にドバイではファイザー製も承認、輸入しはじめたが、マジョリティーは中国製のようだ。
昨日の地元紙によれば、ワクチン接種実績は下記であり、国別ではイスラエルと双肩をなすコロナワクチン先進国であろう。
- トータル接種回数 440万回
- 昨日1日の接種実績 99,781回
- 人口100人当たりの接種数 44回
そして俺も本日1回目のワクチンを接種してきた。高齢者という扱いのおかげで(苦笑)、予約なし、長蛇の列にも並ばずに、合計1時間ほどで受け付けから接種完了までスムーズに終了した。
20日後に2回目を受けて完了である。日本国政府としては中国製ワクチンは認可しておらず、また副作用を気にする人もいるが、周りの日本人駐在員も少しずつ受け始めている。自分の身を守り、かつ職場や友人とのコミュニティーを守ると言う意味で、今できることはやはりワクチン接種だと思うからである。
いずれにせよ、この小さな国に対する信頼、安心感がなければ出来ない行動であろう。たまたま住むことになった今年建国50周年を迎えるこの国に、感心・感謝する次第である。