anezakimanのアブダビ日記

アラブ首長国連邦アブダビ首長国に駐在になりました。そこで出会ったことを綴ります。

新版『日本国紀』を読む(下巻の後半)

敗戦から復興、そして令和の現代まで。ここは苦めの記述も。

  • 日本という国の二千年余の歴史の中でも、未曽有の大敗北であったばかりか、外国の軍隊に国土を占領され、主権も外交権も奪われるという屈辱そのものというべき結果となりました。明治維新以来、七十七年の間に、日本人が死に物狂いで築き上げてきた多くのインフラ施設のほとんどが灰燼に帰したのです。同時に未来への希望も打ち砕かれたといっても過言ではありません。
  • しかし本当の意味で日本人を打ちのめしたのは、敗戦自体よりも、その後になされた占領でした。日本を占領した連合国軍の政策は苛烈そのものでした。専用軍は、かつて有色人種に対して行ったように、日本の伝統と国柄を破壊しようとしたのです。幸いにしてそれらは不首尾に終わりましたが、日本人の精神を粉砕することには成功したといえます。
  • 奇跡的な復興を支えたのは、ひとえに国民の勤勉さでした。敗戦からわずか十九年で、アジアで初めてのオリンピックを開催し、ホスト国として世界の国々を招き、同じ年、第二次世界大戦の戦勝国ですらどこも成し得なかった自足二百キロ以上で走る高速鉄道(新幹線)を東京から大阪まで開通させました。そして、その四年後、GNPで西ドイツを抜き、世界第二の経済大国になったのです。世界はこの復活に驚愕しました。私はこの事実にあらためて深い感動を覚えます。私たちの祖父や父は何と偉大だったのでしょう。
  • しかし、敗れた日本が取り戻せなかったものがありました。それは「愛国心」と「誇り」です。これらは戦後、GHQに木端微塵にされ、占領軍が去った後は、彼らの洗脳を受け傀儡となったマスメディアや学者たちによって踏みつぶされ続けました。国旗と国歌を堂々と否定する文化人が持て囃される国は、世界広しといえど日本だけでしょう。この屈辱は、昭和の輝かしい復興の陰で、決して忘れてはならないことです。
  • 大東亜戦争で三百万人以上の国民の命と海外資産をすべて失い、東京をはじめとする全国の都市を空襲で焼き尽くされ、戦後は多くの国に莫大な賠償金を背負わされた国が、わずか二十年余りで完全復活を成し遂げ、かつての敵国アメリカの背後に迫ったのです。これを「奇跡」といわずして何というのでしょう。戦後の日本は「モノづくり」に活路を見出したのです。これを成し遂げたのは、日本人の勤勉さと研究熱心さ以外の何物でもありません。
  • 「WGIP(War Guilt Infrormation Program。わかりやすくいえば、「戦争についての罪悪感を、日本人に植え付けるための宣伝計画)洗脳世代」が社会に進出するようになると、日本の言論空間が急速に歪み始めます。そして後に大きな国際問題となって日本と国民を苦しめることになる三つの種が播かれました。それは「南京大虐殺の嘘」「朝鮮人従軍慰安婦の嘘」「首相の靖国神社参拝への避難」です。これらはいずれも朝日新聞による報道がきっかけとなったものでした。
  • 日本政府は沖縄を取り戻すため妥協し、これらの条件(有事の米軍の核持ち込み・貯蔵、返還費用はほとんど日本負担、沖縄基地はそのまま米軍が使用など)を呑み、その結果、ついに沖縄の本土復帰が実現しました。実はこれはある意味で歴史的な偉業といえます。というのは、戦争で奪われた領土を外交で取り戻したケースは世界史でもほとんど例がないからです。いかに佐藤首相がしたたかな交渉を行ったかがわかります。
  • 戦後の日本を蝕んだ「自虐思想」に付随して生まれ、浸透したのが日本独特の「平和主義」でした。これは「平和」を目的とするものではなく、極端な反戦思想と言い換えた方がいいかもしれません。憲法九条によって国の安全保障をアメリカに委ねてしまった日本人は、ただ「平和」を唱えてさえいれば、「平和」でいられるという一種の信仰を持つに等しい状態になっていきました。そして「武」を「穢れ」として忌み嫌う、平安時代の貴族のような思想を持つに至ったといえます。
  • 憲法九条と誤った憲法解釈があるばかりに、日本は国土も国民も守れない国になってしまったのです。制定当時の日本人の多くはこれを屈辱と感じましたが、その後、GHQの洗脳教育を受け入れた世代がマスメディアに入り、また左翼系知識人となって社会の大勢を占めるにつれ、この憲法は「世界に誇るべき平和憲法」であるという声が大きくなり、さらに学校教育でもそのように教えられるようになったため、戦後生まれの多くの日本人が素晴らしい憲法だと思い込むようになってしまいました。
  • 戦争のない世界は理想です。私たちはそれを目指していかねばなりません。しかし残念なことに、口で「平和」を唱えるだけでは戦争は止まられません。世界の日本に必要なのは、戦争を起こさせない「力」(抑止力)です。
  • ひとつ明るいことがあります。平成の半ば頃から、国民の多くが日本国憲法の矛盾に気付き始めてきたことです。こうしてGHQの洗脳から抜け出しつつある若い世代が増えています。彼らは失われた日本的なものの回復に向けて、静かに、しかし確実に動き出しています。もやはその動きを止めることは誰にもできないでしょう。私はそんな若者たちを見て胸熱くなる思いでいます。
  • 二千年の歴史を誇る日本人のDNAは、私たちの中に脈々と生き続けていたのです。それが今、復活の時を迎えています。五十年後、はたして日本はどのような国になっているでしょうか。私はその姿を見ることは叶いませんが、世界に誇るべき素晴らしい国家になっていることを願いながら、筆を擱きます。

全文を読んで、今回あらためてマークした部分を読み返しながら考えてみる。記述のすべて正しいかどうか別にして(歴史的に正しいといえるためには相当な時間と議論と検証が必要、またそもそも何が正しいなんてわからないことが多いのだ)、あるいは著者の個人的見解や想いのある部分もあるわけだけど、こうした生き生きとした日本人と日本社会の描写が、俺の知る限りこれまでほとんど学校や社会で話題になっていないことに愕然とする。

どこの国の国民も、自分の国の成り立ちや歩んできた歴史に誇りを持つ。ましてや日本はどこの国よりも誇っていい歴史があるのに、全体としてそうなっていない感じがする。まだ俺も含めてGHQ洗脳世代が跋扈しているということか。

この本に感動した俺は、別に3セットを買ってアブダビに持ち帰り、尊敬する大先輩、学校の先生、日本国外交関係者にお土産としてお渡しした。少しでも多くの人にこの本を手に取って欲しいと感じたからだ。人によって歴史を見る立場は違えど、リバランス、多様な視点は必要だと思うからであり、この本はそうしたことに目を向ける刺激を与えてくれると信じるからだ。

素晴らしい歴史を持つ日本人のDNAを受け継ぐ者として、日本に対する愛国心を持つ者として、誇りと希望を持ってこの国で頑張っていこうとあらためて思いを新たにしております。