anezakimanのアブダビ日記

アラブ首長国連邦アブダビ首長国に駐在になりました。そこで出会ったことを綴ります。

還暦に想うこと

先週、ちょうど還暦の誕生日を迎えた。年齢は単なる記号に過ぎないという考えがベースの俺も、さすがにこの歳になったことにはちょっとした感慨がある。いったんの人生の折り返し、分岐点だろうし、次の生き方を考えるきっかけとなる。

考えてみれば、この1年ほどはそのことが常に頭にあった。『ライフシフト』を読んで、時代の変化とマルチステージ化を改めて認識し、それにも背中を押されて自分にとって新たな分野であるコーチングに飛び込んだ。足掛け9か月ほど学び、その世界観に目を開かされた。

60歳のハウツー本(山ほどある)も含めて、今後の生き方を模索する書籍を読んできた。多少なりともヒントや気付きを得たものには下記がある。

  • 60歳からはやりたい放題(和田秀樹)
  • 弘兼流60歳からの手ぶら人生(弘兼憲史)
  • 仕事も人生もうまくいく整える力: 禅が教えてくれる98の養生訓(枡野俊明)
  • ライフシフト(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット、池村千秋)
  • 生き方(稲森和夫)
  • すべては導かれている(田坂広志)
  • ビジョナリーカンパニーZERO(ジム・コリンズ、ビル・ラジアー、土方奈美)
  • 会社という迷宮(石井光太郎)
  • 絶対悲観主義(楠木建)
  • 「私」という男の生涯(石原慎太郎)
  • 射精道(今井伸)
  • 限りある時間の使い方(オリバー・バークマン 、 高橋璃子)
  • モモ(ミヒャエル・エンデ 、大島かおり)
  • 斎藤一人 発酵力 微生物に学んだ人生の知恵(寺田啓佐)

上述最後の「発酵力」本で「発酵」の素晴らしさに目覚め、いちばん感覚的にフィットしたのが、下記本である。

著者は千葉県で創業350年の歴史を持つ造り酒屋、「寺田本家」の二十三代目当主で、2012年に亡くなられた。発酵という、微生物による大自然の叡智的な摂理から、ご自身の生き方を見直され、人間の生きる道に想いをはせた良書である。

微生物が発酵場でいきいきと働くが如く、自分らしく、楽しく、仲良く生きること、感謝にまさる能力なし、何があっても笑っちゃう、どんなときでもありがとう、このように生きることこそ腐敗せずに発酵できるというシンプルなメッセージであり、多くの点でインスパイヤされた。

昨年12月の日経新聞に紹介された遠山正道さんの下記記事にも大いに刺激を受けた。遠山さんはスープ専門店「スープストックトーキョー」を創業したスマイルズ社長で、俺と同じく至近で還暦を迎えた方である。

「自分の好きという私欲を深く掘っていったら、どこかで社会とバンと繫がる瞬間がある」。個人の好きが社会のニーズに合致するという世界観。それを「社会的私欲」とも呼んできた。

世の中に存在したり、言語化されたりしているのはまだ10%程度にすぎない。「残りの90%は闇の中にある」と思ってきた。だから「世の中に存在しないものを自分たちの手で生み出していく」。

日本では2025年ごろから、ミレニアル世代以降が労働力人口の半分以上を占めるようになる。大きな組織の一員でいるよりも、「個人やプロジェクト単位の仕事の重要性がより増していく」という。「一人ひとりの発意や情熱が大切にされる」時代は遠山さんの経営の実践に重なる。フラットさを大切にしてきたスマイルズの価値観に、世の中が追いつきはじめたともいえる。

遠山さんは1月に還暦を迎えた。最近「新種の老人」と自ら名のるようになった。100歳まで仕事人生を続けるとしたら60歳はまだハーフタイム。「新種の老人だってことにして」人生後半戦でも新しいものを生み出す。

俺も「新種の老人」を目指して、今後は自分の好き、発意や情熱を大切にして生きたいと共感させられた。

こうしたあらゆるインプットで改めて強調されるのは、世界、社会、人生は変化が前提の「無常」の世の中であるということ。従って下記も今後変化するかもしれないが、現時点の5つの想いとして記しておく。

  1. 還暦の今年と来年の2年間を次の人生の移行期間として捉え、自分の感情と好きなことを最優先しつつ、次世代の若者ひいては未来社会への貢献を中心とした利他の精神で、残り40年の人生をワクワクしながら構想する。
  2. 人生パーパス:コミュニケーションの力を信じ、人との出会い、対話、理解、共感、感謝を通じて、自分と自分の周りの世界を楽しくワクワクする場に。
  3. 生き方の姿勢として発酵道を追求、下記7つで自分を発酵させる。
  4. ①美化(まず自分を整えて美化、そして他人も美化して観る)、②笑顔と感謝(何があっても笑っちゃう、どんなときでもありがとう)、③自分が変わる、④起きたことはすべて自分の責任、⑤発酵言葉(楽しき、嬉しき、ありがたき)、⑥自分観察(気分が揺らいでいるときこそ外から自分を冷静に観察)、⑦愛と慈しみ
  5. キーワード:自分らしく(好き勝手に)、しなやかに(山あり谷ありの無常のなかで)、ゆるやかに(いいんちゃう、どんぶらこ)。

こうして言語化すると目の前に少しは道が見えてくるよう。これもコーチングで学んだジャーナリングという手法の成果である。ゆるゆると、前を見ながらでこぼこ道、砂利道を楽しみながら歩んでいきたい。