anezakimanのアブダビ日記

アラブ首長国連邦アブダビ首長国に駐在になりました。そこで出会ったことを綴ります。

インド共和国(ビハール州・UP州・デリー)旅行記・前編

7泊8日の疾風怒濤のインドの旅から帰ってきた。とても充実した盛りだくさんな日々であった。それゆえちょっとした脱力感も。。

インドは広くて多様だ。よく知られているように人口は今年14億人に達して中国を抜いて世界一。複雑で多彩な歴史を背景に、地域によって宗教のばらつき(全体としてはヒンズーが8割だが)、文化や食、そして言語も異なる(現在憲法で認められている公用語が21言語ある)。歴史的に話されてきた言語をベースに州が出来たとも言われており、現在28の州と8つの連邦直轄領(領有権抗争地域含む)、およびデリー首都圏から構成される。世界最大の民主主義国家として、グローバルサウスの盟主として、ナレンドラ・モディ首相というカリスマ的存在もあり、近年著しくその存在感を増してきている。

俺の勤務している会社という身近な例で言うと、従業員の9割近くはインド人で19の州から来ている。とても一つの国として捉えられない多様性を実感している。距離的にも心理的にも身近なインドを旅したいという気持ちはずっとあったが、コロナ禍もあって出かけられなかった。

4月にタイとラオスの帰途、ケララ州のコチに行ったが、リゾート地中心に実質1日だけの滞在であり、今回は1週間かけての本格的なインド旅行となった。それでも地域としてはビハール州、ウッタルプラディッシュ(UP)州、デリーの3つだけである。

今回のメインテーマはお釈迦様の足跡をたどることであったが、マハトマ・ガンディーというもう一人のインドの世界的偉人に現地で触れられたこと、そして現地の様々な人との出会いを通じて、学びと示唆と刺激に溢れた道中となった。下記が全体の行程概略である。

  • Day 1:Etihad便でアブダビ出発、デリーに15時過ぎに到着。デリー泊。
  • Day 2:アグラー1日ツアーに参加してタージマハル等を観光。デリー泊。  
  • Day 3:デリーからビハール州都のパトナにIndigo便で移動(1時間ちょっと)。ナーランダーラージギルを観光。ラージギル泊。
  • Day 4:ラージギルからガヤを経由してブッダガヤで大菩提寺などを観光。ブッダガヤ泊。
  • Day 5:ブッダガヤからバラナシに移動。バラナシ泊。
  • Day 6:サールナート、バラナシ観光。夜、バラナシからデリーへIndigo便で戻る。デリー泊。
  • Day 7:デリー市内観光。デリー泊。
  • Day 8:Etihad便で夜アブダビに戻る。

足はなるべく公共交通機関を使ったが、3日目から6日目までの仏教聖地(紫色の場所)は、主にビハール州という不便な場所に点在している。同州出身の会社同僚の友人経由で紹介してもらった23歳のインド人男子ガイド、ササン君(英語達者)、ドライバー氏(英語ダメ)と事前契約して、同行してもらうことにした。

以下、お釈迦様の足跡巡りを中心とした3~6日目の前編、その前後のアーグラーとデリー観光を中編、そしてインドで俺も考えた的なまとめを後編として綴っていく。前編の中心地域は下図の通り。

第8章「空の哲学」の系譜 | 政治・文化情報2017

Day 3(ナーランダー、ラージギル)

早朝4時30分にホテルを出発し、6時30分発のフライトでビハール州の州都、パトナへ。パトナ空港ではさっそくG20開催にちなんだお釈迦様のポスターが迎えて下さる。

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空港でササン君、ドライバー氏と合流、いよいよお釈迦様を追いかける旅、お釈迦様・推し活ツアーのスタート。パトナには見どころはあまりないが、お釈迦様の時代後の紀元前2-3世紀の最強マガダ国・マウリヤ王朝の都、パータリプトラの跡がある。インドの仏教といえば必ず出てくる同王朝3代目国王、アショーカ王がインド各地に残した仏教遺跡の石柱がある。

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これが有名なライオンの頭。

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パトナから南東に80キロほど離れたナーランダーへ。ここは唐の時代の7世紀に三蔵法師が訪れた場所で、当時1万人以上の学僧が学んでおり、世界最大級の大学だったという。俺は中国制作映画『三蔵法師・玄奘の旅路』(2016年)を観ていて、三蔵法師の苦労を重ねた旅路の果てにたどり着いた当時の荘厳なイメージがあった。

まずは玄奘メモリアルホール。現地の子供に見守られながらご苦労を偲んでお参りさせていただく。

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それから世界文化遺産になっている大学の遺跡へ。広大な敷地に当時学僧が住みながら学んだ部屋や講義室がある。

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それからさらに2時間ほど南下してラージギル(上述地図ではラージャグリハ)に到着。ここは5つの山に囲まれた地で、お釈迦様当時のマガダ国の首都(王舎城)があった。当時のビンビサーラ国王がお釈迦様に帰依していろいろな支援を実施、仏教創成期の一大拠点であったところだ。

まずはラトナギリという山までロープウェーで登り、そこで日本山妙法寺を参拝。

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そこで出会った地元小学生たちに大人気となり、先生含めて写真攻め。

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俺の左隣りが同行のササン、右隣が学校の先生。

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この時期はインドの夏休みに当たっているらしく、どこの観光地に行ってもインド人だらけ。多くの場所で話しかけられ、日本人というと握手や写真要請の嵐(笑)。

そのまま山を歩いて下りながら、お釈迦様が晩年滞在して多くの説法をなした拠点である霊鷲山へ。てっぺんが鷲の頭の形をしている。

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実際にお釈迦様が瞑想された場所で俺も一心に祈る。

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その後、ビンビサーラ国王が息子の皇太子を幽閉したビンビサーラ王の牢獄跡に寄り、

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ラージギルのクライマックスは、ビンビサーラ王がお釈迦様に寄進した竹林精舎の跡。現在も竹林が茂り、お釈迦様が体を清めたと言われる池が残っている。

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こうして初日が終わった。

Day 4(ガヤ、ブッダガヤ)

この日はいよいよお釈迦様が悟りを開かれた地、ブッダガヤ訪問である。南東に3時間ほどのドライブなので、朝8時30分にホテル出発。田舎山道をひた走る。

ブッダガヤの手前のガヤに、お釈迦様が6年間苦行を行なった岩の中で修行した場所があるというので寄る。

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こんなにお痩せになったのだ。

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ブッダガヤのメイン、大菩提寺に行く前に腹ごしらえ。ずっとインド飯だったので、チベット料理(一応和食もあり)レストランで久々のチベット風スープヌードルで一息つく。

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そしていよいよ大菩提寺(マハーボティー寺院)へ。

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お釈迦様が悟りを得た地に建つ高さ52メートルの塔で、アショーカ王が紀元前3世紀に建造した寺院を起源とする。現在の建物は5-6世紀のもので、その後改修を繰り返して現在の形になったという。チベットのダライ・ラマ師も毎年冬に訪れるとのこと。仏教の最大聖地である。大菩提寺構内はスマホ・カメラ持ち込み禁止だが、仲良くなった少年僧が撮ってくれる。

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広々とした敷地内に本殿、そのお隣には大きな菩提樹がある。出家後6年を経た35歳のとき、ゴータマ・シッダールタはこの木の下で49日間の瞑想に入り、ボーディ(菩提、悟り)を得てブッダとなった。現在の木は当時のものから4代目で、脈々とその精神は伝えられているという。

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お釈迦様が悟りを開いた菩提樹の前で俺も一心にお祈り。

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そうして1時間半ほど大菩提寺を散策しているうちに2人の少年修行僧と知り合い、彼らにスジャータ村と日本寺を案内してもらうことになった。スジャータとは、悟りを開く前の苦行中のお釈迦様に、乳粥を提供して元気づけた少女のこと。

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案内してくれた12歳と14歳の元気な少年修行僧。

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印度山日本寺。

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日本寺の敷地内には、日本関係者が現地の子供向けに無料の幼稚園を運営しており、素晴らしいことだと感じた。

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夜はまた同じチベット料理レストランで、モモ(チベット風餃子)とスープで軽く夕食を取って、早々にベッドに入って休む。

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Day 5(ブッダガヤからバラナシへの移動)

大菩提寺で5時30分から朝のお勤めがあるというので、散歩がてら参加する。30分ほどお祈りを捧げ、その後境内をぶらぶらしていると、外で正座しながらゆっくりと「なむみょうほうれんげきょう」のお経を繰り返している尼僧をお見かけした。日本人かなと思いつつ、邪魔してはいけないとやり過ごしたが、帰ろうとしていたら彼女がいたので声をかけてみた。片山さんとおっしゃる日本人の方で、ブッダガヤの印度山日本寺お向かいにある日蓮宗一心寺の僧侶とのこと。ブッダガヤの地に8年以上おられるそうで、日本にもちょくちょく帰国していたが、コロナ禍の時は大変だったとの話で盛り上がる。

その方によれば、サールナートの日本寺にも日本人の女性の方が尼僧として働いているとのこと。サールナートも行く予定にしていたし、これもご縁と思い、彼女から連絡先を聞いて訪ねてみることにした。片山さんと15分ほどお喋りしたあと、日本語を久々に話できましたと言っていただいて笑ってお別れした。

この日の目的地、バラナシまでは東に約250キロ。道路事情の悪いこの地では7時間ほどかかる。上記日本寺での夕方のお勤めに間に合うべく向かったが結局遅れて参加できず、その日はご挨拶のみとして、バラナシの宿に入った。

Day 6(サールナート、バラナシ)

今回の仏教聖地の最後の訪問地、サールナートはお釈迦様が悟りを開かれたあと、初めて5人の弟子に説法したことで有名である(初転法輪という)。まずはサールナートの日本寺で早朝5時からお勤めがあるというので、それに参加すべく4時に起きてバラナシから北へ10キロのサールナートに向かった。

日月山法輪寺というお寺で、長久保さんという尼僧が待っていてくれた。

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この方はご両親がサールナートでのお寺開設に尽力されて、ご本人はインドと坊さんが嫌いだったそうだが決意して64歳で出家、当地に来られて8年経ったという。さっそく朝のお勤めに参加させていただく。瞑想して簡単なお経を唱えたり、太鼓を叩かせてもらったり、そしてスリランカ由来の立派なストゥーパを拝ませてもらった。

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日本茶をご馳走になりながら、少しお喋りをして寺を後にした。それにしてもインドで日本人の僧侶2人がいずれも女性。しかもお一人は70代で頑張っていらっしゃる。感嘆するしかないです。片山さんとともにわずかだがお布施をさせていただく。

サールナート観光を、法輪寺で働いていて日本語も達者なインド人青年が一緒に廻ってくれる。日本人画家がお釈迦様の生涯を本堂の壁画に書いたことで有名なムールガンダ・クティー寺院。

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高さ31メートルの巨大なダメーク・ストゥーパ。

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案内してくれたアローク青年と。

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そして中には入れなかったが鹿公園。この辺りで諸転法輪が実施されたという。

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以上で今回のお釈迦様・推し活ツアーが一応の満了を見たのであった。

このあとバラナシに戻る。ここは一転してヒンドゥー教の一大聖地であり、ガンガー(ガンジス川)の沐浴で有名なところ。ここではササン君の田舎の友人で当地の大学生2人が合流して、一緒に案内してくれる。

クリシュナ神で有名なヒンドゥー教寺院に寄ってから、

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いよいよガンガーへボートで出航。一緒してくれた青春真っ盛りの元気な3人。

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こちらがヒンドゥー教の火葬場で有名なマニカルニカー・ガート。

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若者中心にお騒ぎしながら沐浴中。俺は足を付けただけ。。

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こうしてヒンドゥー教の一端にも触れながら、前編終了であります。