anezakimanのアブダビ日記

アラブ首長国連邦アブダビ首長国に駐在になりました。そこで出会ったことを綴ります。

社会と会社は変えられるか

朝夕散歩して、日中は在宅勤務、夜は飲んだくれ生活である。そんな中でも本は読んでいる。久しぶり、読書まとめ。

ストレスフルな状況もあり、酒井雄哉さんという偉いお坊さん(2013年に死去、最期の肩書は天台宗大阿闍梨)にはまる。荒行で有名な「千日回峰行」を2回もやった方で、エッセイ集、『一日一生』、『続・一日一生』の「あせらず、あわてず、あきらめず、無理をしない」「仏さんには、なんもかんもお見通しかもしれないよ」などの優しいメッセージが心を癒す。

一日一生につながるが、経営の神様、松下幸之助の『日に新た』も悩み多きビジネスパーソンに向かって日々の前向きな姿勢の重要さを説く。丹羽宇一郎氏の『社長って何だ!』ではリーダーの孤独の中での決断力を迫る一方、「いまの瞬間の生活が常に大事になる」「Do your best everyday」と上記本に連なるメッセージ。いろいろな先達・先人も毎日目の前のことに集中して生きることの重要性に言及してるね。御意。

『外資系で自分らしく働ける人に一番大切なこと』(宮原伸生著)は、初めて外資系で働く俺に必要な視点がバシバシあって、実践的なインプットとなった。

キーワードは「アカウンタブルに働く力」。著者の造語だが「主体的、自分がオーナーシップを取る、自分を大切にする」といったニュアンス。そのために必要な6つの要素「ミッションとバリューへの思い」「構想する力」「透明感を出す」「自己成長・変革欲求」「心と体の最適化」「伝える力・巻き込む力」を心に刻み、仕事に使う。

さて、こうした乱読の中でも最近のガツン本2冊。まずは経産省役人の方が書いた下記本。

社会は変えられる: 世界が憧れる日本へ

社会は変えられる: 世界が憧れる日本へ

  • 作者:江崎禎英
  • 発売日: 2018/06/25
  • メディア: 単行本
 

時代に合わなくなっている社会保障制度、特に国民皆保険制度が崩壊の危機にあること、それを視点を変えていろいろな提言をしている。超高齢社会を迎える日本の問題の本質は、「高齢化対策」といったような高齢になることを問題として捉えることではなく、「誰もが健康長寿を願い、経済の豊かさと医療技術の発達によってそれが可能になれば、社会は必ず高齢化するのです。日本をはじめとする先進諸国は、人類が求め続けた正しい道程を歩んでいるだけなのです。日本が世界で最初に突入した超高齢社会は、人類の求める理想に最も近い姿なのです。」「変えるべきは人口構造ではなく、高齢者はリタイヤするものと思っている社会の常識です。今私たちは、1000年に一度とも言える人口構造の大転換期に生きているのです。これまでの常識を覆し、健康長寿を基本とした経済・社会システムを構築することができれば、状況は大きく変わります。」

そして「誰もが最期までの時間を楽しく充実したものとして生きられるような社会が実現した時、日本は世界から見て間違いなく「憧れの国」になるでしょう。1000年に一度ともいえる転換期にあたり、そんな社会をめざす取り組みに挑戦しようではありませんか。」

こうした骨太の問題提起、理想主義的かつ具体的な提言を、ある意味部外者である経産省の方が書籍にすることに驚きを覚える。本書でも記載あるが、この方はこれまでの役所の仕事のなかで常識を疑い、誰もができないと言ってきたことを実行してきたスーパー官僚の方なのだ。常識を疑い、社会の矛盾に声を上げて自分ができることからやってみる。巨大官僚組織や伝統的会社組織のなかでも、「一歩引いてより広い視座から全体像を俯瞰できるかどうかで、その後の展開は大きく変わります」との直言に目が覚まされる。

日本の会社組織の変革に挑戦して、大改造してしまった記録が下記である。

ザ・会社改造 340人からグローバル1万人企業へ

ザ・会社改造 340人からグローバル1万人企業へ

  • 作者:三枝 匡
  • 発売日: 2016/09/01
  • メディア: 単行本
 

 ターンアラウンド・スペシャリスト(事業再生専門家)として著名な三枝匡氏が、自分のビジネス人生の最後に挑んだのが、東証一部上場の機械商社のミスミの企業変革と経営者人材の育成である。ミスミは当時からユニークな経営で知られていたが、実態は経営者人材が少なく、戦略マインドの弱い典型的日本企業であった。

そうした企業を、12年間かけて、戦略ストーリー、戦略ツール・フレームワークの導入と定着、原価システム、国際戦略、買収戦略、生産やオペレーションの内部業革などを成し遂げて、従業員340人のマルドメ企業から1万人のグローバル企業へ、そして売上高500億円から2000億円超へと大躍進した実録企業変革ドラマである。

もともと三枝ファンとして、同氏の企業変革三部作を愛読していた俺だが、これほど理論的ながら実践的でドラマティック、読み応えある経営本を他に知らない。底流にある軸は一切変わっていない。伝統的日本企業への批判も変わらずの気持ち良いくらいの骨太である。

「まず周囲の動向を見る横並び志向、そこから後追いを始めるリスク回避思考では革新の切り口は見つからない。日本独自の強さを理論化し、新たな革新を試みるための経営思想を生み出し、創造的経営リーダー群の育成を図らなければならない。」「いまの日本を小さくしているのは、日本人自身の野心や志の低さ」「会社を同じ組織論のまま長期にわたり放っておく経営では企業成長を実現することはできない」。

コロナ対応での国家の財政危機(一人10万円のバラマキによる財政負担増必至)、そしてその対応として社会保障制度改革は待ったなしとなると思われる。さらにコロナ禍の後の経済危機が多くの企業に襲いかかり、きちんと考え抜いた戦略による企業生き残り、再成長の戦略ストーリー・実行も避けられないだろう。

折りしも本日先ほど、原油価格の国際指標であるWTIが突然、空前絶後のマイナス価格となった。その意味がよく分からない。。

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何が起こるか分からない時代、日本社会と日本企業は変えられるかという課題設定ではなくて、今度こそ変わらなければならないということだろう。上記2冊の本は、社会も会社も変えられることを勇気付けてくれる本として、とても読み応えのある本だと思う。