anezakimanのアブダビ日記

アラブ首長国連邦アブダビ首長国に駐在になりました。そこで出会ったことを綴ります。

引きこもり週末

COVID-19 (Coronavirus Infectious Disease 2019)が猛威を振るっている。全世界で感染者数が10万人を突破、死者3,400人、一方で治った人も5万人いる。中東の感染者はイランが突出していて4,700人余(中国、韓国に続いて世界第3位)、この国は27人である。

こうした余波で、世界は閉じられようとしている。日本からの入国制限をしている国・地域はお隣のサウジを含めて27カ国に及ぶという。UAEは今のところどの国に対しても入国制限はしていない。ただし至近の報道では、ドバイ空港到着時に体温チェックを実施、WHOがリストに上げている日本含む感染国10カ国からの乗客で発熱が認められた場合、検体検査を実施し、それが終わるまでは外出禁止するとのこと。

日本では警戒体制がいっそう加速しているようで、出向元の日本企業でも、海外出張禁止、海外駐在員•出向者の一時帰国禁止、宴会自粛などが矢継ぎ早に出されている。俺も3月後半に予定していた一時帰国を延期せざるをえなくなった。涙なみだである。こちらでも参加者の多い宴会はキャンセルが出始めた。

そんな週末。翌週の大会議の準備のため、残業や休日出勤があって心身ともに疲労していることもあり、朝夕の散歩以外は家で引きこもり。食事は2日間朝昼晩、すべて自炊。金曜日のディナーは親戚が日本から持ってきてくれた里芋を煮物にして日本酒熱燗。

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土曜日の晩餐はステーキに赤ワイン。色とりどりの野菜も欠かせない。
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そして日中は読書三昧。元日本生命のサラリーマン、戦後初の生命保険会社であるライフネット生命の創業者、そして今は立命館アジア太平洋大学の学長である知の巨人、出口治明さんのメッセージ、「多様な価値観に触れて創造性を高めるには、ヒト、本、旅による出会い、啓発しかない」を信奉する俺であるが、ヒトも旅も当面制約がでるとすれば、あとは本しかない。ということで出口さんの以下本に浸る。

全世界史 上巻 (新潮文庫)

全世界史 上巻 (新潮文庫)

 
全世界史 下巻 (新潮文庫)

全世界史 下巻 (新潮文庫)

 

20万年におよぶ現人類の歴史のなかで、文字資料が残っているのはメソポタミアで紀元前3500年ころ、すなわち今から約5000年前である。そこから始めて1000年ごとに区切った5千年紀を、地域や国、政治・経済・文化などでぶつ切りにせずに、時代順に追っていくという、まさに壮大な全世界史である。

わかりやすい平易な記述ながら、最新の歴史研究の成果を踏まえていて、昔学校で習った世界史に新鮮な見直しを迫る。さらに人物中心の記述で傑出した人物、愚かなリーダーを出口流にわかりやすく評価して紹介しており、歴史上の登場人物の生き生きとした物語である。歴史ファンの俺としては、上下900ページを超える大作を読み終えるのがもったいないと思うほど充実した時間であった。

そして終章の21世紀を、9.11テロ、リーマンショック、東日本大震災といった「どしゃぶりで始まった第六千年紀」としつつも、未来に対するポジティブな姿勢は変わらない。

僕はよく「接線思想」と呼んでいるのですが、円に接している直線は、ほんの少し円が回転するだけで大きくその傾き(方向)を変えます。そうすると直線の動きに目を奪われて、円の動きという本質を見逃します。これと同じで、人間はどうしても目先のことを過大視しがちです。

問題点を指摘することは、比較的たやすいことです。どの世界にも歪なかけらが山ほどあるからです。しかし大事なことは、全体としてのシステムの安定性です。人間社会とはいつの世にあっても、歪なかけらが集まって、一つの安定状態を形成するものなのです。したがって、どのようなシステムや制度であっても、「個々の歪さ」ではなく、「全体として見たときに、比較的丸く収まっているかどうか」が決定的に重要です。

しかしこれだけ愚かな人間が、これだけの愚行を繰り返してきたにもかかわらず、人類は今日現在、この地球で生きているのです。それはいつの時代にも人類のたった一つの歴史、つまり5000年史から少しは学んだ人がいたからでないでしょうか。今、人類が生きているというこの絶対的な事実からして、僕は人間の社会は信頼に足ると確信しています。

人類という大げさな話でなくとも、身近な日本社会、我が業界や会社、そしてプライベートでも示唆に富んでいると感じる。いろいろと大変な時期であるが、長い歴史的視点で考えることが大事だと感じた次第。こんな週末も悪くないね。